HARAKIRI FOR THE SKY5

HARAKIRI FOR THE SKY(ハラキリ フォー ザ スカイ)
MAERE / 2021年 / 87点

オーストリア出身のポストブラックメタルバンド、5枚目のアルバムです。

「ハラキリ」という日本人にとってはインパクト絶大なワードを使っている事で(一部で)有名なバンドです。

本作は2枚組で、総収録時間は1時間24分の大ボリューム。にも関わらず曲数は10曲しかなく、7~8分台の曲が大半を占め、最長で11分と非常に長大な曲が並んでいます。まあ、毎回そんな感じですが(汗)。

スタイル自体に大きな変化は無く、モノクロな世界が想像できそうな「虚無感」を感じる寂しいメロディ全開のブラックメタルです。良くも悪くもブラックメタルらしい「邪悪さ」は無いのがポイントです。ブラストを使って爆走する場面も多いですが、トーンダウンして静かに聴かせる場面もあり、緩急の巧みさを感じられます。

決して気軽に聴ける作品ではないものの、胸の奥にまで染み入るこのメロディはやはり良いですね。サウンド的にはヘヴィなのに、一抹の不安を感じるんです。沈んだ気分の時に聴いたらそれこそ腹切りしたくなってしまいそうですが、それ故に感じられるカタルシスにはたまらないものがあります。マイケル・JJ・V・ワーントラウムのボーカルも悲痛さが伝わってきて実に素晴らしい。

総じてこれまで作品が好きならマスト、ドラマチックなメロディを求める人にもぜひ聴いてもらいたい作品だと思います。

欠点としてはやはりそのボリュームでしょう。アーティスティックと言えなくもないですが、実際問題、1時間24分も集中して聴くのはかなり大変です。まあ、短いよりかはいいんですけどね。また、全ての曲がまったく同じスタイルなので、何曲か風変わりな曲があっても良かったかもしれません。

お気に入りは「And Oceans Between Us」。「そして私たちの間の海」というタイトルからして良いですね。泣きたくなるメロディも実に良いです。

余談ですが、これを書いてる時点で日本語のウィキペディアも無いし、日本じゃ人気無いんでしょうかね? やっぱり物騒なバンド名だからかなぁ……。